倒産や事業縮小による解雇、雇い止めなど会社都合による退職。
退職の前後にやらなければならない手続きが色々ありますが、何をすれば良いのかわからず、不安な人もいると思います。
また、退職するという事は収入がなくなるという事ですから、退職後の金銭面でも不安があるでしょう。
実際、わたしも大手運送会社で5年半パートとして働いていましたが、事業縮小による雇い止めで退職をしました。
その時の経験をこの記事で伝えていく事で、今後会社都合で退職を迫られた方々にとって一助にしていただければと思います。
この記事では、会社都合によって退職する方が、
- 退職後の社会保険の切り替え
- 退職後の所得税、住民税はどうするの?
- 退職後、失業保険はいくら位もらえるのか?
3級ファイナンシャル・プランニング技能士のわたしが解説します。
会社都合退職なのに退職届は出す?
会社都合退職の場合、退職届は原則不要となります。
しかし、退職勧奨の場合は提出を求めてくることもあります。
この場合、退職理由を一身上の都合にしてはいけません。
一身上の都合は自己都合と捉えられる事があり、後に申請する失業保険の給付が会社都合退職と比べて不利になることがあるからです。
退職理由の欄には会社都合によるもの(退職勧奨のためや事業縮小による解雇など)と正しく記入しましょう。
退職日に返すもの、受け取る書類
退職日に会社に返却するものと会社から受け取る書類をまとめました。
退職日に返すもの
退職日には会社から借りていたものや書類などを返しましょう。
- 制服
- 名札
- 保険証
- 社員証
制服など退職当日まで使うことになるものは、退職後の返却方法を事前に確認しましょう。
会社から必要書類を受け取る
退職後には健康保険の切り替えや年金の切り替え、失業保険の給付申請をおこないます。
そのために必要な書類を会社から受け取る必要があります。
退職時の必要書類は、後日郵送で届くなど、会社によって引き渡し方が違います。
事前に確認しておきましょう
参考までに、わたしの場合は退職後9日後に社会保険資格喪失証明書が普通郵便にて、10日後に離職票が書留にて届きました。
退職後に行う社会保険の切り替え
今まで会社がやってくれていた社会保険の支払いですが、退職後は切り替えも支払いも自身で行わなければいけません。
社会保険には、健康保険と年金の2種類があります。
健康保険の切り替え
退職後、健康保険の切り替え先は3通りです。
- 家族の扶養に入る
- 国民健康保険に切り替える
- 任意継続被保険者制度を活用する
家族の扶養に入る
親や配偶者など家族が加入している健康保険に被扶養者として加入します。
最大のメリットは保険料がかからないことです。
加入された家族の社会保険料も増えるということはないため、家族全体として保険料を抑えることが出来ます。
しかし、被扶養者の収入が130万円を越えると扶養を外れるため、家計として収入を抑えなければならないというデメリットもあります。
国民健康保険に切り替える
国民健康保険は地方自治体が運営している社会保険です。
会社員や被扶養者以外のほぼ全ての方が加入している保険で、加入に条件が必要なく誰でも加入出来ます。
しかし、傷病手当金や出産手当金が支給されない、保険料が全額自己負担、扶養の概念が無いなど、健康保険に比べると手厚さが劣ります。
自治体によって加入手続きの際に必要なものが違うので事前に確認をしておくとスムーズに手続きが出来ます。
任意継続被保険者制度を利用する
任意継続被保険者制度とは、退職後も在職時の健康保険に引き続き加入し続けることが出来る制度です。(最長2年)
健康保険であるため扶養の概念があります。
そのため扶養者がいる場合は、家族全員で国民健康保険に加入するよりも保険料が抑えられるようになります。
しかし、在職時は労使折半だった保険料が全額負担になるため保険料が在職時の2倍になるというデメリットもあります。
提出する必要書類は任意継続被保険者資格所得申請書が必須です。
退職日が確認できる書類は任意での提出となっていますが、退職日が確認できる書類を提出しないと保険証の発行が遅くなります。
そのため、すぐに保険証が欲しいという方は退職日が確認できる書類を提出した方が良いです。
また、被扶養者がいる場合は別途、添付書類が必要となります。
詳しくは加入を希望する健保組合、または協会けんぽに確認しましょう。
比較表
切り替え先 | 保険の運営主体 | 申請場所 | 保険料 | 加入条件 | 申請に必要な書類 | 申請期限 | 扶養の概念 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
扶養 | 家族が加入している健康保険組合、または協会けんぽ | 家族の会社 | なし | 年収130未満 | ・被扶養者(異動)届・住民票・収入要件確認のための書類(詳細は被保険者の加入している組合、協会に確認) | 退職から原則5日以内 | 扶養されている |
国民健康保険 | 市区町村 | 市区町村役場 | 各市区町村や所得による | なし | ・保険資格喪失証明書・マイナンバーカード(市区町村によって異なるため、事前に確認することをオススメします) | 退職後14日以内 | なし |
任意継続被保険者 | 働いていた会社の健康保険組合、または協会けんぽ | 働いていた会社の健康保険組合、または協会けんぽ | 在職時のおよそ2倍 | 健康保険の被保険者期間が継続して2ヶ月以上 | ・任意継続被保険者資格所得申請書・被扶養者がいる場合、別途必要書類あり | 退職後20日以内 | あり |
例1)40代ひとり親世帯(母子家庭、小学生2人養育)の場合(令和3年母子家庭の平均年収272万円で計算)
国民健康保険加入の場合 ¥362,100-/年
任意継続被保険者制度の場合 ¥302,280-/年
任意継続の方が年間¥59,820-安い。
例2)40代独身世帯の場合(例1同様の年収272万円で計算)
国民健康保険加入の場合 ¥241,900-/年
任意継続被保険者制度の場合 ¥302,280-/年
国民健康保険の方が年間¥60,380-安い。
上記のように、同じ年齢でも前年の収入、家族構成、自治体によって金額が変わるため個々で比較をすることが大切です。
退職後の国民健康保険料は各自治体に問い合わせるか、国民健康保険料シミュレーションサイトで確認出来ます。
国民健康保険料シミュレーションサイトはこちら→https://www.mmea.biz/simulation/kokuho_calculation/
年金の切り替え
年金には区分が3種類あり、退職前は第2号被保険者として厚生年金に加入していました。
しかし、退職後は年金も切り替える必要があります。
第1号被保険者 | 第2号被保険者 | 第3号被保険者 |
---|---|---|
自営業者・学生・フリーター・無職など | 厚生年金保険加入者 | 第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者 |
退職後は厚生年金から脱退する為、国民年金に切り替える(第1号被保険者)か扶養に入る(第3号被保険者)必要があります。
扶養(第3号被保険者)
健康保険で配偶者の扶養に入った場合は年金の加入手続きも必要です。
手続きに必要なことは、配偶者の会社に第3号被保険者関係届を退職から14日以内に提出します。
保険料の負担はありません。
国民年金(第1号被保険者)
国民年金の加入手続きは退職から14日以内に市区町村役場で行います。
必要な持ち物は、年金手帳(基礎年金番号がわかる書類)・身分証明書・離職日のわかる書類(被保険者資格喪失証明書や離職票など)です。(自治体によって必要なものが違うことがあります。詳しくはお住まいの自治体に確認しましょう。)
保険料は¥16,980-/月(令和6年度)です。
退職後の住民税の納税
在職時は給料から天引きされていた住民税も自身で納税しなければなりません。
しかし、退職の時期によって納税方法が変わります。
1/1~5/31に退職する場合
最後の給与で一括天引きされます。
6/1~12/31に退職する場合
普通徴収(6月8月10月1月納付)に切り替わり自分で支払う事になります。
失業保険の給付申請
在職時に払っていた雇用保険は退職後に失業保険として受け取ることができます。
自己都合で退職した場合は申請から給付まで2ヶ月以上かかりますが、会社都合で退職した場合は申請から7日後に給付してもらえます。
支給される金額は、在職時の45%~80%です。
支給される期間は、雇用保険の被保険者期間や年齢によります。
申請に必要なものは、離職票1.2、雇用保険被保険者証、マイナンバーカード、身分証明書です。
申請場所はハローワークで、申請期限は1年間です。
申請期限を過ぎると失業給付を受け取れなくなります。
出来る限り早くもらえるように離職票を入手後は、早めに申請に向かいましょう。
失業保険の給付日数
・自己都合退職の場合
被保険者期間 | 10年未満 | 10年以上20未満 | 20年以上 |
---|---|---|---|
全年齢 | 90日 | 120日 | 150日 |
・会社都合退職の場合
被保険者期間 | 1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
---|---|---|---|---|---|
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ー |
30歳以上35歳未満 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
35歳以上45歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
45歳以上60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
60歳以上65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
退職後の所得税
在職時は給与から所得税が差し引かれています。
しかし退職するとほとんどの方は所得税を払い過ぎている事になります。
払いすぎた所得税は年末調整や確定申告をすることで戻ってきます(還付)。
退職した年内に再就職した場合は、退職時に受け取った源泉徴収票を再就職先に提出して年末調整をやってもらう事で完了します。
再就職せずに年を越した場合は、翌年に確定申告をしなければなりません。
年末調整や確定申告は、所得税の還付や翌年の住民税額を決定するためにやらなければならない事です。
再就職したら年末調整は会社がやってくれるので安心ですが、再就職しない場合は翌年の確定申告を忘れずに行いましょう。
まとめ
会社都合での退職は、退職届の提出は必要ありませんが提出を求められたら会社都合であることをちゃんと書きましょう。
退職時には会社に返すもの、受け取るものがありますので忘れずに。
退職後は、健康保険の切り替え、年金の切り替えが必要になります。
住民税の支払いは退職時期により最後の給料に影響しますので意識しておきましょう。
失業保険の給付申請を行うことで、再就職まで金銭的に余裕を持つことができます。
退職した年の年末までに再就職をしなかった場合は、翌年に確定申告を忘れずに行いましょう。
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